「古い資料を見せてください」と言われた場合の正しい対応について


税務調査で「古い資料を見せてください」と言われた場合の正しい対応
今回は、税務調査で古い資料を求められた際の対応について、実際の判例を踏まえて解説します。
1.法定保存期間の基本
法人税法第126条および所得税法第148条では、帳簿書類の保存期間を原則7年間と定めています。
つまり、8年以上前の資料については、納税者に法的な保存義務はなく、税務署への提出義務もありません。保存期間を過ぎた帳簿や契約書を破棄しても、法律違反にはあたりません。
2.具体的な事例
ある法人が10年前に取得した建物を売却した際、調査官から「当時の売買契約書」を求められました。取得から10年経過しているため提示義務はありませんが、調査官の意図は「取得原価の確認」でした。
この法人では契約書を電子データで保管しており、提示したことで調査は円滑に終了しました。提出義務がなくても、将来の資産売却を見据えてスキャン保存しておくことは非常に有効です。
3.判例から見る保存期間超過の扱い
● 東京地方裁判所 平成6年2月24日判決
「法定の保存期間を経過した後に書類を廃棄しても、提出拒否に当たらない」と判断。資料を提示しなかったことで不利益な扱いを受けることはないと示されました。
● 東京地裁 平成15年6月23日判決
契約書を紛失していても、帳簿や通帳などの「間接証拠」によって実態を説明できれば、取引の実在が認められるとされています。
4.調査官が古い資料を求める理由
調査官が古い資料を求めるのは、過去の資産取得経緯(建物・土地の原価)、関連会社との取引、役員貸付金の発生時期などを検証したいためです。
これらはあくまで「任意の協力依頼」であり、提出を強制できるものではありません。「法定保存期間を経過しており、現存しておりません」と伝えれば、法的には問題ありません。
5.実務上の対応ポイント
- ✔ 即答せず、「確認してから回答します」と一言置く。
- ✔ 法的な提出義務があるか、保存期間を確認する。
- ✔ 任意提出の場合、調査官の意図を汲み、必要最小限で対応する。
- ✔ 迷う場合は必ず会計事務所に相談。不用意な提出は調査範囲の拡大を招きます。
6.森本会計事務所からのアドバイス
法律上の保存義務は7年間ですが、土地・建物などの長期資産に関する契約書は、「保有期間中+売却後7年間」は保管しておくのが実務上安全です。
電子契約やスキャン保存を活用し、証拠を提示しやすい環境を整えておきましょう。古い資料を求められても焦らずに状況を整理し、必要に応じて専門家へご相談ください。





